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ブランド研究

奈雪の茶(ナイシュエ、Naisnow)とは何者か。日本の大阪店はどうなったのか、なぜ日本語の名前を捨てたのか、「新式茶飲で最初に上場した店」が赤字から抜け出せない理由

2020年の夏、大阪・道頓堀に「奈雪の茶」という中国のティーチェーンが上陸し、初日に600人が並びました。その店は15か月で閉まり、会社は看板から「の」の字を消し、名前を2回変え、株価は96%下がりました。それでも2025年11月、新しい名前の商標が日本で登録されています。深圳のIT会社員だった女性が始めた店に何が起きたのか、公開資料と現地の報道から整理しました。飲食店が持ち帰れることも分けて書いています。

公開日 2026年9月25日

奈雪の茶(ナイシュエ、現在の正式名は「奈雪」、英語名Naìsnow)は、2015年に中国・広東省深圳市で生まれたティードリンクのチェーンで、2021年6月に新式茶飲の会社として初めて株式を上場し、2026年6月末時点で1,685店を持つ会社です。果物とお茶のフルーツティーに、店で焼く柔らかい欧風パンを合わせた「茶とパン」の型で、200平方メートルを超える大型店を都心の商業施設に出すやり方で伸びました。

日本については、2020年7月4日に大阪・道頓堀のラオックス道頓堀店1階に日本1号店が開き、2021年9月30日に閉店しました。以後、日本に営業中の店はこの記事の公開時点でありません。一方でこの会社は2022年12月と2025年5月の2回、名前と看板を変えています。1回目は日本語の「の」を捨てるため、2回目は海外で読みやすくするためです。そして2025年11月、その新しい名前「Naisnow 奈雪」の商標が、喫茶店の区分を含めて日本で登録されました。名前を変えた会社が、なぜ赤字から抜け出せないのか、日本に戻ってくる含みはあるのか、順を追って見ていきます。金額は1元を約23円、1香港ドルを約20円で換算しています。

中国・深圳市の商業施設にある奈雪(NAIXUE)の店舗。緑の「奈雪 NAIXUE」の看板、カウンターに並ぶ焼き菓子のショーケース、Naisnowの文字が入ったピンクのギフト箱、注文する客と配達員
2026年5月、深圳市福田区の商業施設に入る奈雪。看板は2022年から使う「奈雪 NAIXUE」で、カウンターのギフト箱には2025年に決めた新しい英語名「Naisnow」が入っています。左端の黄色い服は配達員で、この会社の売上の半分以上は出前です(撮影: LeeHuam ROAHMM、2025年5月、Wikimedia Commons、CC0)

奈雪の茶とは。数字で見る現在地

まず、この会社の大きさと現在地を、公開されている数字で並べます。

項目数字・事実時点
読み方中国語で「ナイシュエ」。2020年の大阪出店時は「なゆきのちゃ」「NAYUKI」、2022年12月から「奈雪的茶」「NAIXUE」、2025年5月から「奈雪」「Naìsnow(ナイスノー)」
創業2015年11月、広東省深圳市。創業者は彭心(ポン・シン)氏と夫の趙林(チャオ・リン)氏。「奈雪」は彭心氏のネット上のニックネーム
本社深圳市。運営会社は深圳市品道餐飲管理有限公司、持株会社は奈雪的茶控股(Nayuki Holdings)
店舗数1,685店。直営1,315店、加盟370店。海外は東南アジアと米国に約30店2026年6月末
売上高43.31億元(約1,000億円)、前年比12.0%減。調整後の純損失2.41億元(約55億円)2025年通期
2026年上半期売上高18.93億元(約435億円)、13.1%減。調整後の純損失0.97億元。中国の上場ティーチェーン5社で唯一の赤字2026年1〜6月
上場香港証券取引所、2021年6月30日、証券コード2150。新式茶飲で最初の上場
株価公開価格19.8香港ドルに対し、2026年6月24日の株主総会時点で0.65香港ドル(96.7%安)2026年6月
客単価24.4元(約560円)。上場前後の42元前後から4割下がった2025年
会員登録会員1.26億人、月間のリピート率25%2026年6月末
看板商品霸気橙子(オレンジのフルーツティー)、霸気芝士草莓(いちごのチーズティー)、軟欧包(柔らかい欧風パン)
日本2020年7月4日に大阪・道頓堀で開店、2021年9月30日閉店。以後、営業中の店はない。2025年11月に「Naisnow 奈雪」の商標を日本で登録2026年9月

店の数では蜜雪氷城(6万店超)や茶百道(8,863店)の足元にも及びません。この表で見てほしいのは、「新式茶飲で最初に上場した会社」が、上場から5年たっても赤字で、客単価を4割下げ、店の数も減っているという組み合わせです。中国のティーチェーンの中で、奈雪だけが違う道を歩いてきました。その道が何だったのかを、順を追って見ていきます。

IT会社員だった彭心氏が作った「茶とパン」の店

奈雪の始まりは、深圳のIT企業でブランド担当をしていた彭心氏です。1987年に湖北省で生まれ、2010年に江西財経大学を出て深圳の上場IT企業に入り、2012年末に退職して事業計画を作りました。飲食の経験はなく、資金も店の当てもない状態で、2013年3月に友人の紹介で飲食業を長くやっていた趙林氏に会い、2時間かけて事業構想を説明した、と中国メディアは書いています。ふたりは3か月後に結婚し、彭心氏がネットで使っていたニックネーム「奈雪」を店の名前にしました。

2015年11月、深圳の卓越世紀中心に1号店を開きました。最初から3店を同時に出すために自宅を銀行に抵当に入れた、という話が上場時の紹介記事に残っています。この店の型が、その後の中国のティーチェーンに大きな影響を与えました。

年できごと
2015年11月深圳・卓越世紀中心に1号店。1か月以内に3店に。看板は「奈雪の茶」、英語表記はNAYUKI
2017年1月に7,000万元の外部資金を調達。12月に深圳の外へ出て全国展開を始める
2018年末シンガポールに海外1号店
2019年2月に酒を出す「奈雪酒屋」、11月に深圳に会社で最大の体験型店舗「奈雪夢工廠」を開く。多角化の時期
2020年7月大阪・道頓堀に日本1号店。年末の店舗数は489店
2021年6月香港に上場。新式茶飲で最初。上場時は直営556店
2021年8月新華社の潜入取材で北京2店の衛生問題が報じられ、翌朝に謝罪
2021年9月大阪店が閉店
2022年5月に奈雪夢工廠を閉店。11〜12月に看板を「奈雪的茶」「NAIXUE」へ(1回目の改名)。12月に同業の楽楽茶に5.25億元を出資
2023年7月にフランチャイズ加盟を開始。通期で上場後初めての黒字。12月にバンコクで海外を再開
2024年店の数が年の半ばに約1,900店で頂上に。通期は売上4.7%減、調整後で9.19億元の赤字。年末1,798店
2025年5月に名前を「奈雪」「Naìsnow」へ(2回目の改名)。10月にニューヨークに米国1号店。通期で152店の純減
2026年3月に「纖・Studio」など健康路線の新店型。上半期も赤字だが縮小。6月末1,685店

年表の前半と後半で、会社の性格が変わっているのが分かります。2019年までは「最初にやる会社」でした。果物を丸ごと使ったフルーツティーを大型店で出すこと、お茶と焼きたてパンを同じ店で売ること、酒や1,000平方メートルの体験型店舗まで広げたこと。2021年の上場もその延長です。ところが上場後は、酒屋を閉め、夢工廠を閉め、名前を変え、直営一本だった方針を加盟に開き、大型店を小型店に改装する側に回りました。「最初にやった会社」が、あとから来た会社に追い抜かれていく5年間です。

名前を2回変えた理由。「奈雪の茶」から「奈雪的茶」、そして「Naìsnow」へ

「奈雪の茶」と検索する日本の人が最初に引っかかるのは、名前の話だと思います。看板にひらがなの「の」が入ったこの店は、日本の会社でも日本人の名前でもありません。「奈雪」は創業者のニックネームで、「の」は中国の若者向けブランドで流行していた日本風の表記です。この「の」を、会社は2022年に自分で消しました。

中国・蘇州の観前街にあるガラス張りの商業ビル。2階の壁面に緑の「奈雪の茶」ロゴとNAYUKIの文字。隣にはONLYの店舗
2024年10月、蘇州・観前街の奈雪。改名から2年たってもひらがなの「の」と「NAYUKI」の旧ロゴが残っていた店で、写真を投稿した人は「ロゴは変わっていない」と添えています。看板の交換は全国で一斉ではなく、順次でした(撮影: Shwangtianyuan、2024年10月、Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0)
1回目(2022年12月)2回目(2025年5月)
中国語の名前奈雪の茶 → 奈雪的茶(「の」を「的」に)奈雪的茶 → 奈雪(「的茶」を落とす)
英語の名前NAYUKI(日本語読み)→ NAIXUE(中国語のピンイン)NAIXUE → Naìsnow(「奈」のピンインNai+英語のsnow)
ロゴ書体を直線的に。緑色は継承散らばる線と点で雪の結晶を表す新ロゴ。緑色は継承
会社の説明「創業7周年のブランド刷新」「海外で発音しやすく、覚えやすい名前にするため」。創業者は「今年は海外に出るので、ブランドの視覚記号を国際化した」
メディアの読み「脱日本化」。中国で日本風の表記への反発が強まった時期で、名創優品や元気森林の日本風要素の見直しと同じ流れ「xue」の発音が中国語以外の人に難しい、先に欧米に出た蜜雪氷城(MIXUE)との混同を避ける
日本での報道日本経済新聞が「日本語風の店名を変更」と報じ、看板の切り替えは広西チワン族自治区などから順次と伝えた36Kr Japanが「脱日本化の中国ティードリンク、グローバル市場目指し再刷新」と報道

1回目の改名について、会社は日本を意識したとは一度も言っていません。ただ、この時期の中国では「国潮」と呼ばれる国産ブランド志向が強まり、日本風の名前や表記をやめる会社が相次いでいました。会社は「2023年3月までに販促物と店の装飾から日本の要素を無くす」と約束した、と香港の英字紙は報じています。彭心氏はそれ以前から「奈雪は私の昔のネット名にすぎず、やりたいのは中国茶の文化を若い人に届けること」と話していたので、「の」はもともと、本人にとって守るべきものではなかったのだと思います。

2回目の改名は、逆の方向を向いています。2025年は会社がニューヨークに店を出す年で、「奈雪」を中国語以外の人が読めるようにする必要がありました。日本のSNSでは「ナイスノー」という新しい響きに戸惑う声も出ましたが、会社にとって日本語読みの「なゆき」はもう戻る選択肢ではなく、中国語読みの「ナイシュエ」も海外では通じにくい。その間を取った名前が「Naìsnow」です。

中国・北京の商業施設にある奈雪的茶(NAIXUE)の店舗前に並ぶ客の列。木目の壁に「奈雪 NAIXUE」の看板、緑の「奈雪的茶」のサイン、棚に並ぶ茶葉のギフト、注文と受け取りの画面
2024年6月、北京・西北旺の奈雪的茶。1回目の改名後の看板「奈雪 NAIXUE」と「奈雪的茶」のサインが並び、店の前に列ができています。左の棚は茶葉のギフト。この会社は飲み物だけでなく、茶葉やボトル飲料も売ります(撮影: N509FZ、2024年6月、Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0)

名前を2回変えても、変わらなかったものがあります。日本で登録された商標です。次の章の前に先に書いておくと、深圳の運営会社は2024年5月に「NAISNOW」を、2025年4月に「Naisnow 奈雪」と雪の結晶のロゴを日本に出願し、それぞれ2025年2月と11月に登録されています。この話は日本の章で詳しく書きます。

なぜ赤字が続くのか。大型の直営店という「コストのブラックホール」

奈雪の業績を5年分並べると、赤字と黒字の間を行き来しながら、売上そのものが縮んでいることが分かります。

売上高と調整後の純損益の推移(億元) 濃い色は売上高。橙は損失、薄い青は利益。同じ縮尺で描いています 43.0 -1.5 2021年 42.9 -4.6 2022年 51.6 +0.2 2023年 49.2 -9.2 2024年 43.3 -2.4 2025年 18.9 -1.0 2026年上期 出所: 会社の業績公告をもとにした各報道(21世紀経済報道、深圳新聞網、騰訊新聞ほか)
売上は2023年の51.6億元が頂上で、そこから2年で8億元以上減りました。損失は2024年の9.2億元から2025年は2.4億元に縮んでいますが、売上が増えて縮んだのではなく、原材料費と人件費を切って縮んだ形です。

なぜ赤字が続くのか。趙林会長自身が2026年の株主総会で使った言葉が、いちばん分かりやすい説明です。「大型店のモデルはコストのブラックホールだった。今年中に改修を終える」。奈雪の店は、蜜雪氷城や茶百道のような数十平方メートルの持ち帰りの店ではなく、200平方メートルを超える座れる店で、店内で焼くパンの厨房を持ち、都心の商業施設の一等地に入ります。2021〜2022年の決算では、店を借りる権利の償却だけで年4億元を超えて売上の1割にあたり、原材料費が34%、各種のコストを足すと売上の8割近くになる、と新華網が整理しています。

この型は、客が1杯42元を払ってくれる間は回っていました。ところが2022年以降、中国のティードリンクの値段の中心が10元台に下がる中で、奈雪も主力を15〜22元に下げ、9元からの「軽松」シリーズや月9.9元の会員カードを出しました。客単価は2021年の41.6元から2025年の24.4元へ、4割下がっています。店の造りと家賃は42元の時代のまま、売る値段だけが24元になった。これが赤字の正体です。

項目数字時点
客単価41.6元(2021年)→ 24.4元(2025年)
直営1店の1日の売上7,700元(2025年)→ 7,000元(2026年上半期、前年同期の7,600元から減少)
直営1店の1日の注文数313件(2025年、前年比15.7%増)→ 286.7件(2026年上半期)
売上に占める出前の割合41.4%(2024年)→ 52.6%(2025年)。店内飲食は13.1%から9.3%へ
パンの売上3.52億元、前年比33%減。売上の8.1%2025年
ボトル飲料の売上1.79億元、前年比39%減2025年
累計の損失調整後で2018年からの8年で約20億元2025年まで

この表でもうひとつ目を引くのは、出前が売上の半分を超えたことです。座れる大型店を作った会社の客の半分が、店に来ていません。2026年6月の株主総会では「パンが店で焼くものから工場で作ったものに変わった」と株主が問いただし、会社は「コロナ以降はオンラインの注文が主流になった」と答えています。座席と厨房のために払っている家賃が、出前の客には何の価値も生まない。奈雪の赤字は、商品が売れないことより、店の型が客の買い方と合わなくなったことから来ています。

飲食店の食材を扱う会社としての読み方: 奈雪が最初に作った「座れる大型店でフルーツティーとパン」は、中国の若い女性が「お茶をカフェで飲む」体験を初めて手にした型でした。その体験を作った会社が、出前と値下げの時代に最も重い荷物を背負うことになった。先にやることと、それを続けられることは別だ、という例です。

加盟を始めても店が増えない。98万元の壁

中国のティーチェーンは、本部が加盟店に原料を卸して稼ぐ型が主流です。蜜雪氷城も茶百道もCHAGEEも、店の99%近くが加盟店で、本部の収入の大半は加盟店への原料と設備の販売です。奈雪はこの型を、最も遅く、最も高い条件で始めた会社です。

2023年7月20日、奈雪は「加盟パートナー計画」を発表しました。それまでは直営一本で、この日まで加盟店は1店もありませんでした。条件は、1店の初期投資が98万元(約2,250万円)から、自己資金の証明が150万元(約3,450万円)以上、店の面積は90〜170平方メートル、年齢は25〜45歳。同じ時期に喜茶の加盟が41万元、楽楽茶が40〜50万元だったので、中国メディアは「市場で最も厳しい加盟条件」と書きました。翌2024年2月には投資額を58万元(約1,330万円)からに下げ、面積も40平方メートルからに緩めています。

それでも店は増えませんでした。加盟店の数は2023年末に81店、2024年末に345店、2025年末に358店。2025年の1年間の純増は13店です。同じ2025年に古茗は3,640店、滬上阿姨は2,273店、茶百道は226店を純増させています。2026年3月の決算説明会で趙林会長は「加盟事業の核心的な課題は、初期投資が大きすぎて加盟店の投資回収が長いこと」と認め、今後は長期志向の加盟店を優先すると話しました。

加盟店の側の声も出ています。2026年9月の捜狐の記事は、中古の厨房設備の買い取り業者の話として、回収した設備の中に開いて間もない奈雪の加盟店のものが複数あり、「四線都市の主要な商業施設にあった店は1年で120万元の赤字だった」と伝えています。1店の話で全体を語ることはできませんが、98万元から58万元に下げても、茶百道の加盟が内装と設備を含めて20〜40万元とされることを考えると、奈雪の加盟は「安く始めて数で稼ぐ」型には乗っていません。

上場初日から公開価格割れ、5年で96%安

奈雪は2021年6月30日、香港証券取引所に上場しました。新式茶飲では最初の上場で、公開価格は仮条件の上限の19.8香港ドル、調達額は約48億香港ドル(約970億円)、香港の個人向けの申し込みは431倍でした。ところが初日の始値は公開価格を下回り、終値は17.12香港ドルと13.5%安。公開価格で計算した時価総額約340億香港ドルが、この会社の頂上になりました。

その後の5年間で、株価は上がる場面がほとんどありませんでした。上場直後の2021年8月に食品安全の問題が起き、2022年は赤字が広がり、2024年は9億元を超える赤字。2025年に入ると株価は1香港ドルを割り、中国の投資家が「仙股(ペニー株)」と呼ぶ水準になりました。2026年6月24日の株主総会の時点で0.65香港ドル、公開価格から96.7%安、時価総額は10億香港ドル台です。会社は2024年から自社株買いを繰り返していますが、株価は戻っていません。この株主総会には10人あまりの株主しか来ず、「4元で株主総会に参加した」という個人株主の声を証券時報が記事にしています。

この5年間で、あとから上場した会社はみな奈雪より高く評価されています。蜜雪氷城は2025年3月、茶百道は2024年4月に香港に、CHAGEEは2025年4月にナスダックに上場し、いずれも利益を出しています。「新式茶飲で最初に上場した」という肩書きは、奈雪にとって早すぎた勲章でした。

2025年からの立て直し。健康路線、小型店、そして海外

会社は2025年を「調整の年」、2026年を「発展の年」と呼び、来年の黒字化に自信があると2026年3月の決算説明会で話しています。打っている手を並べます。

打ち手中身時期
店の閉鎖と改装2025年に直営を165店減らし、大型店を小型の「Pro店」に改装。2026年中に残りの改装を終える計画2025〜2026年
健康路線「緑色・健康」を数年の戦略の軸に。白領の昼食向けの軽食店「green」を深圳で始め、2025年5月に北京・上海・広州・深圳で30店を同時開業。ケールの小さな緑のボトルなどを主力に2025年2月〜
新しい店型深圳・海岸城に「纖・Studio」1号店。血糖値が上がりにくい「低GI」と食物繊維の多さを打ち出した「纖果茶」の新カテゴリ2026年3月13日
新商品の数2025年にドリンク70品、パン54品の新商品。2026年上半期は野菜と果物のヨーグルトスムージー、フォカッチャのサンド、果物のコーヒーなど2025〜2026年
コラボ2024年10月30日に『ハリー・ポッター』とのコラボを開始。寮ごとの色のカップとグッズが付く商品が初日に40万セット近く売れたと報道。中国の茶飲業界で2024年に最もコラボの回数が多かったのは奈雪2024年
海外2023年12月にバンコクで再開。2024年8月にバンコクの中心部に旗艦店(開業3日で約100万バーツ)。シンガポールのチャンギ空港、クアラルンプール、チェンマイと広げ、東南アジアに15店。2025年10月9日にニューヨーク・フラッシングに米国1号店(3日で約8.7万ドル)、2026年1月にシリコンバレーのクパチーノ、6月にブルックリンと、米国で6〜7店2023〜2026年

海外については、2018年のシンガポールと2020年の大阪の店がどちらも閉まり、いったん海外がゼロになってからの再挑戦です。2023年12月に南方都市報の取材に会社は「海外は直営で」と答えており、東南アジアと米国はいずれも本部が直接運営しています。米国では価格が3.9〜8.9ドルで、ニューヨークの店の前に長い列ができる様子が中国のSNSで繰り返し話題になりました。ただし虎嗅の分析では、2025年の時点で軽食店と海外を合わせた売上への貢献は全体の1%未満です。立て直しの効果が出るのは、これからです。

もうひとつ、この会社が見落とされがちな武器を持っています。登録会員1.26億人と、それを使ったデジタル化です。2023年に一度黒字になったとき、会社は理由を「デジタル化による原材料の管理と効率化」と説明し、直営店の営業利益率を17.7%まで上げました。店の型が重くても、注文と会員を数字で握っている会社は、型を軽くしたときの立ち上がりが速い可能性があります。

日本の現在地。道頓堀の15か月と、2025年に登録された「Naisnow 奈雪」の商標

「奈雪の茶 日本」と検索すると、2020年の開店を伝える記事と、閉店を伝える食べログが並びます。先に結論を書くと、2020年7月4日に大阪・道頓堀のラオックス道頓堀店1階に日本1号店が開き、2021年9月30日に閉店しました。予定されていた東京の店は開かず、この記事の公開時点で、日本に営業中の店はありません。ただし日本法人は登記が残り、2025年11月に新しい名前の商標が日本で登録されています。確認できた事実を並べます。

時期できごと出所
2019年9月10日日本法人「品道株式会社」の法人番号が指定される(当時は東京都港区赤坂)。親会社は深圳市品道餐飲管理有限公司国税庁 法人番号公表サイト
2020年1月23日会社が「2020年に日本と米国に初めての店を開く」と発表。当時は中国に約400店、シンガポールに3店共同通信PRワイヤー
2020年7月4日大阪市中央区道頓堀1-8-22、道頓堀ゼロゲート内のラオックス道頓堀店1階に「奈雪の茶 道頓堀店」が開店。約200平方メートル、65席。初日は約600人が来店日経クロストレンド、Pretty Online、界面新聞
2020年7〜8月開店時の価格はいちごチーズティー880円、大紅袍烏龍タピオカミルクティー800円、パンの「魔法棒イチゴ」380〜700円。1か月後の人気ランキングではいちごチーズティーがM680円・L780円とサイズ制になっていた。道頓堀店だけの「たこ焼きパン」250円Pretty Online、osaka.style
2020年9月日本事業は「1年半以内の黒字化」を目指し、2021年3月に東京へ出店予定と報道。出前アプリに加盟NNA、PR TIMES
2021年6月香港上場。目論見書の店舗数「中国70都市以上と大阪に556店」に、大阪の1店が海外店として載る南方都市報
2021年9月30日閉店。入居先のラオックス道頓堀店が「コロナで訪日客の需要がしばらく見込めない」として同じ日に閉館。東京の店は開かなかったなんば経済新聞、開店閉店.com
2022年11月中国で看板から「の」を消す改名。日本経済新聞が報道日本経済新聞
2024年5月22日深圳の運営会社が「NAISNOW」の商標を日本に出願(2025年2月18日登録)J-PlatPat
2025年4月14日「Naisnow 奈雪」の文字商標と雪の結晶のロゴを日本に出願。2025年11月4日に登録。区分は飲料・パンのほか、「喫茶店における飲食物の提供」を含む第43類J-PlatPat
2026年9月日本法人「品道株式会社」は世田谷区に本店を移して登記が存続。日本での再出店の発表や求人は見当たらない国税庁 法人番号公表サイト、当社の確認
日本での歩み 2019年9月日本法人品道株式会社 2020年7月道頓堀に開店初日600人65席の大型店 2021年9月閉店営業15か月 2022年12月中国で「の」を看板から消す 2025年11月商標を日本で登録「Naisnow 奈雪」喫茶店の区分込み 2026年9月営業中の店はない 出所: 国税庁 法人番号公表サイト、J-PlatPat、日本と中国の報道
店は閉まりましたが、法人と商標は残っています。2025年の商標は「奈雪の茶」ではなく、改名後の「Naisnow 奈雪」の名前で取られています。

道頓堀の店については、閉店の理由を会社が日本で説明した記録は見つかりませんでした。分かっているのは、入居先のラオックスがコロナで訪日客を失って閉館したこと、奈雪の店がそれと同じ日に閉まったこと、そして中国側の報道で会社が「コロナを理由に閉店を選んだ」と説明していることです。日本の店は、上場の年に、ラオックスという「訪日客向けの箱」の中で、訪日客がゼロになった状態で営業していました。

日本に戻ってくるのか。当社の見方

ここからは当社の見方です。2024年と2025年に日本で取られた商標は、無視できない事実だと考えています。中国の会社が日本に商標を出すのは珍しくありませんが、奈雪は2022年に「日本風の要素を無くす」と約束した会社で、その会社が2025年の新しい名前で、飲料やパンだけでなく「喫茶店における飲食物の提供」まで含めて日本の商標を取り直しています。名前を守るためだけなら第43類は要りません。少なくとも、日本で店を開く選択肢を自分で閉じてはいない、と読んでいます。

一方で、2026年9月時点で日本での出店の発表も求人もなく、創業者が2025年に語った海外の計画は東南アジアと欧米だけです。会社の海外は直営で、本部の資金と人を使います。赤字が続き、米国に店を増やしている最中の会社が、日本に人を割く順番はまだ先だと思います。もし戻るなら、2020年の道頓堀とは別の型になるはずです。2020年の店は、200平方メートルの座れる店で1杯880円でした。喜茶が2025年に道頓堀で1杯1,000円前後から入って15か月で動きを止め、蜜雪氷城が安さで伸び悩んでいる日本で、奈雪が本国の「大型店で高い一杯」をそのまま持ち込むとは考えにくい。会社が本国で小型店と健康路線に舵を切っているので、戻るときはその型になる、と私たちは見ています。

奈雪だけが違う場所に立っている。上場4社と何が違うのか

中国の上場ティーチェーンを並べると、奈雪だけが違う商売をしていることが分かります。価格帯や店舗数、日本での歩みのような各社の横顔は茶百道の記事の比較表にまとめているので、ここでは奈雪と他社を分ける軸だけを並べます。

蜜雪氷城・古茗・茶百道・CHAGEE(上場4社)奈雪(Naisnow)
店の持ち方店の99%前後が加盟店。本部は店を持たない直営が78%(1,315店)。加盟は2023年7月に始めたばかりで370店
本部の稼ぎ方加盟店に原料・包材・設備を卸す。茶百道は収入の95%、CHAGEEも原料と設備の販売が中心自分の店で飲み物とパンを売る売上。家賃と人件費も自分で払う
店の型持ち帰り中心の数十平方メートルの店。座席は少ないか無い200平方メートル級の座れる店を商業施設の一等地に。店内で焼くパンの厨房を持つ(改装で小型化の途中)
値下げの効き方卸の粗利は加盟店の杯数で決まる。値下げは杯数を増やす手値下げがそのまま自分の売上減になる。客単価41.6元→24.4元で赤字に
2025年の店の純増古茗+3,640・滬上阿姨+2,273・茶百道+226-152(上場5社で唯一の純減)
2026年上半期の損益蜜雪 利益22.96億元・CHAGEE 9.18億元・茶百道 3.45億元損失0.97億元(5社で唯一の赤字)
海外の出し方加盟や現地パートナーで広げる(茶百道は韓国でフランチャイズ認可)約30店すべて直営。本部の資金と人で出す

上場5社の中で、本部が「原料の卸」で稼いでいないのは奈雪だけです。だから奈雪の決算は、中国のティーチェーンで「直営の大型店で飲み物とパンを売る商売」がどれだけ儲かるかを、唯一そのまま見せてくれる資料でもあります。その答えが、上場5年で4年赤字、客単価4割減、という数字です。原料卸を持つ4社が加盟店を増やして利益を出す一方、奈雪は自分の店の家賃と人件費を自分で払い続けています。

飲食店が真似できること、できないこと

飲食店の食材を扱う会社として、奈雪の10年から日本の飲食店やカフェが持ち帰れるものを分けます。ここも当社の見方です。

真似できること

真似できないこと

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当社(マルイ物産)は、ボタンを押すだけでドリンクができる業務用の自動ドリンクマシンと、専用の原料を飲食店向けに取り扱っています。奈雪やCHAGEEのような専門店品質のフルーツティーやミルクティーを「誰が作っても同じ味」で出したい方、ドリンク専門店ではない店に1品だけドリンクを載せたい方は、お気軽にご相談ください。

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奈雪のメニューは何でできているか。業務用で再現するなら

最後に、奈雪を代表するメニューを素材の目で分解します。どれも「茶葉のお茶」が土台で、そこに果物か乳か、チーズの泡を重ねる構成です。

メニュー主な素材店で必要なもの
霸気橙子(オレンジのフルーツティー)オレンジの果肉、ジャスミン茶、シロップ、氷果肉を潰すペストル、お茶を濃く淹れる道具、シェイカー
霸気芝士草莓(いちごのチーズティー)いちご、ジャスミン茶、クリームチーズと生クリームの泡(チーズフォーム)チーズフォームを泡立てるミキサー、果肉を潰すペストル
大紅袍烏龍タピオカミルクティー大紅袍(岩茶)の烏龍茶、牛乳、タピオカ、シロップタピオカを茹でて保温する器、お茶を濃く淹れる道具
霸気玉油柑(油柑のフルーツティー)油柑(アムラ)の果汁、緑茶、シロップ果汁を絞る道具。日本では代わりの果物が要る
軟欧包(柔らかい欧風パン)小麦粉、果物やクリームのフィリング。日本の店では「たこ焼きパン」も出した店内で焼くならオーブンと発酵の設備。いまの本国は工場製に切り替え

ポイントは、果物とチーズの泡に負けないお茶の濃さです。奈雪のフルーツティーの多くはジャスミン茶が土台で、香りの立つ茶葉を濃いめに淹れるか、抽出済みの濃縮茶を使うと、果物を載せても茶の輪郭が残ります。オレンジやいちごの果肉は、日本の店なら冷凍の果肉ソースで置き換えるのが現実的です。当社の冷凍フルーツソースには、ストロベリー、グレープフルーツ、パッションフルーツ、台湾レモンなどをナタデココと合わせた90gと130gの小袋があり、1杯分ずつ使えます。大紅袍のような焙煎の強い烏龍茶は、当社の台湾茶葉の炭焙烏龍や焙香烏龍で近い方向の味が作れます。タピオカの扱いは芋圓の記事で、タピオカと芋圓の違いと合わせてまとめています。

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よくある質問

奈雪の茶の読み方は?
中国語の発音は「ナイシュエ」です。2020年に大阪に出店したときは「なゆきのちゃ」と紹介され、英語表記も「NAYUKI」でした。2022年12月に中国語の「奈雪的茶」と英語の「NAIXUE」に変わり、2025年5月からは「奈雪」と「Naìsnow(ナイスノー)」が正式な表記です。日本では今も「奈雪の茶」の名で検索されることが多いため、この記事では両方を併記しています。
奈雪の茶はどこの国のブランドですか?
中国のブランドです。2015年11月に広東省深圳市で彭心氏と趙林氏の夫婦が開いた店が始まりで、本社は今も深圳にあります。日本語版のWikipediaには上海で創業したと書かれていますが、会社の説明と中国語の資料はいずれも深圳です。名前の「奈雪」は創業者の彭心氏がネットで使っていたニックネームで、日本の会社でも日本人の名前でもありません。
奈雪の茶は日本に店がありますか?
この記事の公開時点(2026年9月)で、日本に営業中の店はありません。2020年7月4日に大阪・道頓堀のラオックス道頓堀店1階に日本1号店が開きましたが、入居先のラオックスが閉館したのに合わせて2021年9月30日に閉店しました。2021年春に予定されていた東京の店は開いていません。ただし日本法人の品道株式会社は登記が存続しており、2025年11月には新しい名前「Naisnow 奈雪」の商標が喫茶店の区分を含めて日本で登録されています。
奈雪の茶はなぜ名前を変えたのですか?
2回変えています。1回目は2022年12月で、「奈雪の茶」を「奈雪的茶」に、英語の「NAYUKI」を中国語読みの「NAIXUE」に改めました。会社は7周年の刷新と説明しましたが、中国で日本風の表記への反発が強まった時期で、メディアは「脱日本化」と報じました。2回目は2025年5月で、「奈雪」と「Naìsnow」に変え、海外で発音しやすくするためと説明しています。
奈雪の茶の店舗数は?
2026年6月末時点で1,685店です。内訳は直営が1,315店、加盟が370店で、海外は東南アジアと米国を中心に約30店です。2024年半ばの約1,900店をピークに減り続け、2025年は1年で152店の純減となって、中国の上場ティーチェーンで唯一店が減った会社になりました。同じ時点で蜜雪氷城は6万店超、茶百道は8,863店、CHAGEEは7,639店です。
奈雪の茶は上場していますか?赤字ですか?
2021年6月30日に香港証券取引所に上場し、新式茶飲では最初の上場企業になりました(証券コード2150)。ただし公開価格19.8香港ドルに対して初日の終値は17.12香港ドルと13.5%安で、2026年6月には0.65香港ドルまで下がっています。業績は2023年に一度黒字になったあと、2024年に9.19億元、2025年に2.41億元の赤字(調整後)で、2026年上半期も0.97億元の赤字です。
奈雪の茶のハリー・ポッターコラボは日本でも買えますか?
コラボは中国の店舗だけで実施されました。2024年10月30日に始まり、寮ごとの色のカップやグッズが付く限定商品は発売初日に40万セット近く売れたと報じられています。日本では実施されていないため、日本のフリマサイトや代行サービスに並ぶグッズは中国で買われたものです。
参考にした資料(49本。別タブで開きます)

数字は各資料の公表時点のものです。店舗数や価格は変わりやすいため、本文では時点を併記しています。加盟にかかる費用と加盟店の収支は会社の開示ではなく中国メディアの報道によるもので、店の型と地域で大きく変わります。日本の商標と法人の情報は、2026年9月25日にJ-PlatPatと国税庁の法人番号公表サイトで当社が確認したものです。

執筆者 神戸慧士の顔写真
執筆: 神戸 慧士(マルイ物産 データ分析)
数字はすべて公開資料からの引用で、当社の見方は「当社の見方」と明記した部分に限っています。写真はいずれもWikimedia Commonsのクリエイティブ・コモンズ写真(実物の店舗)です。
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