蜜雪氷城(MIXUE)はなぜ安いのか。世界最多6万店を支える原料卸の仕組みと、日本で伸び悩む理由
香港上場企業の年報と中間報告、中国語圏の分析記事、日本の報道を読み比べて、蜜雪氷城の勝ち方と、2026年に見えてきた壁、日本での現在地を整理しました。飲食店が真似できることと、できないことも分けて書いています。
蜜雪氷城(MIXUE、ミーシュー)は、中国・鄭州発のドリンクとソフトクリームのチェーンで、2026年6月末の店舗数は6万3,987店。店舗数では世界で最も多い外食チェーンです。安さの理由はひとつで、店で稼ぐ会社ではなく、加盟店に原料・包材・設備を卸して稼ぐ「原料卸」の会社だからです。2025年の売上335億元のうち、97.6%が加盟店への商品・設備の販売でした。
日本では2023年に表参道と池袋で始まり、「2028年ごろまでに1,000店」という構想が日本経済新聞で報じられました。ところが2026年6月時点の日本の店舗は4店だと中国メディアが伝えています。中国で通用した仕組みが、なぜ日本では通用しにくいのか。この記事では、蜜雪集団が香港取引所に出した2025年の業績公告と2026年の中間報告を土台に、中国語圏の分析記事と日本の報道を突き合わせて、仕組みと限界を順に書きます。読み方は中国語で「ミーシュエビンチェン」、日本の店舗は英語名の「MIXUE(ミーシュー)」を使っています。金額は1元を約23円で換算しています。
蜜雪氷城とは。数字で見る現在地
まず、この会社がどのくらいの大きさなのかを、公開されている数字だけで並べます。出どころは蜜雪集団の2025年業績公告、2026年中間報告、それを伝えたJETROのビジネス短信と36Kr Japanです。
| 項目 | 数字 | 時点 |
|---|---|---|
| 創業 | 1997年6月、河南省鄭州市。創業者は張紅超氏(当時大学1年生) | |
| 店舗数 | 6万3,987店(中国本土5万9,609店、海外4,378店、17か国) | 2026年6月末 |
| 売上高 | 335億6,000万元(約7,700億円)、前年比35.2%増 | 2025年通期 |
| 親会社株主の純利益 | 58億8,670万元(約1,350億円)、前年比32.7%増 | 2025年通期 |
| 売上の中身 | 商品・設備の販売97.6%、加盟と関連サービス2.4% | 2025年通期 |
| 上場 | 香港証券取引所、2025年3月3日、銘柄コード2097 | |
| 主な価格帯(中国) | レモン水4元、ソフトクリーム2元、タピオカミルクティー6元。主要製品の平均は2〜8元 | 2025年 |
| 加盟店の比率 | 99.9%以上。直営は36店 | 2026年6月末 |
| 店舗の立地 | 中国本土の58.0%が三線以下の地方都市。一線都市は4.9% | 2026年6月末 |
| グループのブランド | 蜜雪氷城、幸運咖(Lucky Cup、コーヒー)、鮮啤福鹿家(生ビール) | 2025年 |
| 日本の運営会社 | SNOW KING株式会社(東京都中央区) | 2025年9月 |
店舗数が世界一になったのは2024年です。Business Insider Japanの記事によると、2024年末の店舗数4万6,479店が、同じ時点のスターバックスの4万576店を上回りました。2025年には約6万店、2026年6月には6万4,000店近くまで増えています。
3つの転機で読む歴史。1元のソフトクリーム、レモン水、中央工場
蜜雪氷城は最初から大きかった会社ではありません。台湾のブランドコンサルティング会社RULES CREATIVEが目論見書から10段階にまとめた発展史を読むと、最初の10年は生き残るのがやっとの店でした。転機は3つあります。
| 年 | できごと | 意味 |
|---|---|---|
| 1997年 | 大学1年生の張紅超氏が祖母から3,000元を借り、鄭州で「寒流刨冰」というかき氷の屋台を始める。かき氷機は自作 | 立ち退きで3回閉店。合肥で氷砂糖菓子の露店も失敗 |
| 1999〜2003年 | 「蜜雪冰城」の名で店を構え、一時は家庭料理の食堂に転業 | 氷菓は冬に売れないという問題に直面 |
| 2006年 | 1元のソフトクリームを発売。翌夏に1日5,000本売れる | 転機1。親戚や知人が次々に加盟を申し出て、翌2007年からフランチャイズを始める |
| 2007〜2008年 | 河南省内に26店の加盟店。冬に売れず翌春には6店に減る。2008年に会社を設立し、弟の張紅甫氏が加盟管理を担当 | 季節に左右されないミルクティーや温かい飲み物の開発に向かう |
| 2012年 | 中央工場を設立し、核心原料の自社生産を始める。中国の現製ドリンク業界で最初の中央工場 | 転機2。2008年の粉ミルク事件を機に、原料を自分で作る方針に転換したと台湾の食力が伝えている |
| 2013〜2014年 | 700mlで3元のレモン水を発売して大ヒット。2014年に自社物流を作り、全国の加盟店に送料無料で配送 | 転機3。アイスの店から「アイスとお茶」の店に変わり、加盟店が急増 |
| 2017年 | コーヒーの子ブランド「幸運咖」を開始 | 瑞幸咖啡(luckin)の急拡大を見て低価格コーヒーに参入 |
| 2018年 | ベトナム・ハノイに初の海外店。マスコット「雪王」と主題歌を導入 | ブランドコンサルの華與華と組んだブランド再設計 |
| 2020年6月 | 店舗数1万店を突破。中国のティードリンクで初 | |
| 2025年3月 | 香港証券取引所に上場。約34億5,000万香港ドルを調達 | 公募の申込金額は1.83兆香港ドルで香港の記録を更新 |
| 2025年10月 | 生ビールチェーンの福鹿家の株式53%を2億9,680万元で取得 | 茶、コーヒーに続く3つ目のブランド |
| 2025年12月 | 米国ロサンゼルスとニューヨークに出店。2026年2月にメキシコ | |
| 2026年3月 | 張紅甫氏がCEOを退いて共同董事長に。CFOだった張淵氏がCEOに就任 | 新規出店の速度を意図的に落とすと発表 |
3つの転機に共通するのは、「売れる1品を、原価ぎりぎりで、自分で作れる形にした」ことです。1元のソフトクリームで客を呼び、レモン水で通年の商品を持ち、中央工場と物流でそれを全国に同じ価格で届けられるようにした。この順番が、次に書く「安さの仕組み」の土台になっています。
なぜ安いのか。売上の97%は加盟店への卸
蜜雪氷城を「安いドリンク屋」だと思うと仕組みを見誤ります。売上の中身を見ると、消費者に飲み物を売る会社ではなく、加盟店に原料を売る会社です。
この構造を、台湾のRULES CREATIVEは「茶飲ブランドに偽装したサプライチェーン企業」と呼び、南方日報は「見た目は安い飲み物を売る会社だが、稼ぐ場所は店の裏側にあるB向けの産業チェーンに移っている」と書いています。若水数位評価は「加盟店が毎月必ず原料を買うので、定期購読に近い収入構造になっている」と表現しています。
安く売っても利益が出る理由は、その原料を自分で作っているからです。年報と目論見書に書かれている数字を並べます。
- 原料の6割以上を自社生産。核心となる原料は100%自社生産。河南、海南、広西、重慶、安徽の5か所に生産拠点があり、糖、乳、茶、コーヒー、果実、穀物、副材料まで一通り作っています。2026年5月には新しい生産拠点が稼働したと中間報告にあります
- 自社で作る包材は、外から買うより約50%安い。シロップやジャムの容器まで自社で作っていると目論見書に書かれています(南方日報の引用)
- 調達コストは業界平均より10〜20%低い。世界38か国に及ぶ産地直結の調達網と、買う量の大きさが理由です。2023年時点で年間約11万5,000トンのレモンを買う中国最大のレモン購入者だと食力が伝えています
- 物流は自社で持ち、加盟店への配送は無料。2026年6月末で中国に31の倉庫があり、300を超える地級市に配送しています。若水数位評価によると、約90%の店に12時間以内に補充できます
- それでも本部の粗利率は30%台。2024年は32.5%、2025年は31%前後、2026年上半期は30.4%です。Business Insider Japanは、客単価が同業の半分の11元台でも粗利率は他社並みかそれ以上だと書いています
つまり「安い」のは店頭の価格だけで、本部の商売は普通の食品メーカーや卸と同じ粗利で回っています。差がつくのは規模で、店が増えるほど原料の買う量が増え、原価が下がり、価格を下げられ、さらに店と客が増えるという循環です。钛媒体はこれを「飛輪(はずみ車)」と呼んでいます。
加盟の条件。加盟金で稼がず、原料で稼ぐ
加盟店から見た条件も、この仕組みの裏返しになっています。目論見書と中国語圏の記事に出ている数字をまとめます。中国での条件で、日本の条件は公表されていません。
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 加盟費 | 年7,000元(県城)、9,000元(地級市)、1万1,000元(省都)。ほかに管理費4,800元、研修費2,000元 | 目論見書(若水数位評価の整理) |
| 売上の分け前 | 本部は取らない。加盟店の損益は加盟店持ち | 目論見書(RULES CREATIVE) |
| 原料の調達 | 食材、包材、設備はすべて本部から買う | 目論見書 |
| 開業までの初期投資 | 研修、内装、設備、初回仕入れなどで合計約37万元(約850万円) | ダイヤモンド・チェーンストア(2023年) |
| 加盟の審査 | 申請の通過率は5%未満 | 目論見書(RULES CREATIVE) |
| 加盟店主の数 | 2万9,775人。1人あたり約2.1店 | 2026年中間報告 |
| 1店の1日あたり売上 | 4,184元(2024年1〜9月)。前年同期の4,416元から5.3%減 | 目論見書(長江商報の引用) |
| 損益分岐の目安 | 1日の売上3,000元以上が必要と業界では言われている | 長江商報 |
加盟費が年1万元前後、つまり20万円台というのは、日本のフランチャイズの感覚からするとほぼ無料です。本部は加盟店を「客」として扱い、加盟店が儲かって店を増やすほど本部の原料販売が増える設計です。RULES CREATIVEは目論見書の一文を引いて「加盟店こそが蜜雪氷城の主要な顧客だ」と書いています。
一方で、1店あたりの売上は下がり続けています。長江商報によると、1日あたりの売上は2023年の4,416元から2024年には4,184元に減りました。南方日報は、同じ地域に店が増えて客を取り合う「共食い」を目論見書のリスク項目から引いています。この点は次の章の「壁」につながります。
雪王と主題歌。安さを安っぽく見せない仕掛け
安売りの店は、放っておくと安っぽく見えます。蜜雪氷城がそうならなかった理由として、中国語圏の記事が必ず挙げるのがマスコットの「雪王(シュエワン)」と主題歌です。
雪王は2018年にブランドコンサルティング会社の華與華と組んで作った、王冠をかぶりソフトクリームの杖を持つ白い雪だるまです。店の看板、シャッター、カップ、グッズまで全部この1つの記号で統一されています。2021年6月には、アメリカ民謡「おおスザンナ」を替え歌にした主題歌「你愛我、我愛你、蜜雪冰城甜蜜蜜」の動画を公開し、これが中国のSNSで大流行しました。2025年の中間業績を伝えた観察者網によると、動画アプリの抖音での「#蜜雪冰城」の再生回数は2025年上半期までに542億回を超えています。
この効果は数字にも出ています。2025年に始めた「特色飲品と雪王のグッズ」を組み合わせた旗艦店は、鄭州本社の1店だけで2025年の売上が9,800万元(約22億円)に達したと小食代が業績説明会の内容として伝えています。日本の池袋店でも、店の角の窓に雪王が置かれていて、日本人の客がわざわざ写真を撮っていたと36氪出海の取材記事にあります。
2026年に見えてきた壁。店は増えても売上が伸びない
ここまでが「なぜ勝ったか」です。ただ、2026年8月に出た中間報告は、この仕組みが曲がり角に来ていることを示しています。3期分の数字を並べます。
| 項目 | 2024年通期 | 2025年通期 | 2026年1〜6月 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 248.3億元(+22.3%) | 335.6億元(+35.2%) | 152.2億元(+2.3%) |
| 純利益 | 44.5億元(+39.8%) | 59.3億元(+33.1%) | 23.2億元(-14.7%) |
| 粗利率 | 32.5% | 31.1% | 30.4% |
| 期末の店舗数 | 46,479店 | 59,823店 | 63,987店(+20.7%) |
| 海外の店舗数 | 4,895店 | 4,467店(-428店) | 4,378店 |
| 加盟店の閉店数 | 1,609店 | 2,527店 | 1,289店 |
店舗数は1年で2割増えたのに、売上は2.3%しか増えず、純利益は減りました。中間報告と36Kr Japanの記事から、理由は4つ読み取れます。
- 店が密集して1店あたりの売上が落ちている。2025年の閉店は2,527店で、前年の1,609店から57%増えました。会社は2026年の新規出店を意図的に減らし、既存店の運営支援に資源を回すと説明しています
- 2025年の売上がフードデリバリーの値引き合戦で押し上げられていた。その反動で2026年は比較の基準が高くなっていると会社が説明しています。注文がデリバリーに移り、店に来る客が減ったことも業績説明会で語られています
- 原料が値上がりしている。長江商報によると、2025年6月末に加盟店向けのレモンの供給価格を1件200元から255元に27.5%引き上げました。国内主産地の異常気象と世界的な供給不足が理由で、店頭価格は据え置いたため加盟店の粗利が圧迫されています
- 海外が初めて縮んだ。2025年の海外店舗は428店減り、これは海外進出以来初めての年間減少です。インドネシアとベトナムで採算の悪い店を閉めたと会社は説明しています
食品安全の問題も無視できません。中国の消費者苦情サイト「黒猫投訴」には2026年3月までに1万1,000件を超える苦情が集まり、直近1か月の7割が食品安全に関するものだったと長江商報が伝えています。2025年6月には香港の店で冷凍デザートから基準を超える大腸菌群が検出され、当局から販売停止を命じられました。加盟店が99.9%を占める仕組みでは、本部が末端の衛生を管理しきれないという弱点が、規模が大きくなるほど表に出ます。
株式市場の評価もこれを織り込んでいます。株価は2025年6月の高値618.5香港ドルから、2026年3月には286香港ドルまで下がりました。2026年3月には創業者の弟でCEOだった張紅甫氏が共同董事長に退き、CFOだった張淵氏がCEOに就いています。小食代が伝えた業績説明会では、経営陣から「粗放な出店のやり方はもう通用しない」という趣旨の発言が出ています。
日本での現在地。1,000店構想と4店の現実
日本の話に入ります。日本の店舗については公式サイトに一覧がなく、報道を時系列に並べるのが現状を知る一番の近道です。
| 時期 | できごと | 出所 |
|---|---|---|
| 2022年10〜12月 | 中国のSNS「小紅書」で日本1号店を東京・表参道に出すと予告。中国のネットでは「家賃を払えるのか」と話題に | 36Kr Japan |
| 2023年5月 | 原料と設備の輸入検疫の許可が下りる。予告から約8か月。ららぽーとTOKYO-BAYに期間限定店 | 界面新聞、JBpress |
| 2023年6〜8月 | 池袋(立教通り)と表参道に常設店。紅茶100円、ソフトクリーム160円、タピオカミルクティー360円 | ダイヤモンド・チェーンストア、JBpress |
| 2023年10月 | 日本経済新聞が「2028年ごろまでに日本1,000店」の計画を報道。会社は界面新聞に「まず2023年内に20店」と回答 | 界面新聞 |
| 2024年7月 | 原料高、円安、物流費を理由に20〜180円の値上げ。同時に日本での加盟店の募集を開始 | 36氪出海 |
| 2025年9月 | 横浜中華街店を開店。運営会社はSNOW KING株式会社(東京都中央区) | SNOW KING社のプレスリリース |
| 2025年11月 | 新大久保駅前店を開店 | 日経中文網 |
| 2026年6月 | 日本の店舗は4店だけと日経中文網が報道。1,000店構想の0.4% | 钛媒体(日経中文網の引用) |
大阪日本橋や神戸元町にも出店した時期があり、開店と閉店を繰り返しているのが実態です。最新の店舗は日本法人の公式Instagramで確認するのが確実です。
日本の価格は中国の2〜4倍。それでも日本の同業より安い
| 商品 | 中国の価格 | 日本の価格(2023年開店時) |
|---|---|---|
| レモン水/紅茶 | 4元(約90円) | 100円 |
| ソフトクリーム | 2元(約45円) | 160円 |
| タピオカミルクティー | 6元(約140円) | 360円 |
界面新聞によると、日本の価格は「日本の大手ティースタンドの同種商品の6割程度」に設定され、家賃と人件費から独自の価格モデルで決めたと会社は説明しています。値上げ後も、日本のティースタンドの中では最安の部類です。
なぜ日本で伸び悩むのか。中国語圏の分析が挙げる5つの理由
钛媒体(金角財経)と界面新聞、若水数位評価の分析を読むと、理由は5つに整理できます。
- 店を出すコストが桁違い。钛媒体は「日本の内装費は中国の約5倍で、総投資の7〜8割を占める。物件は10〜15か月分の保証金を求められ、新しいブランドは審査や第三者保証も要る」と書いています。中国では平均20日で店が開くのに対し、成熟市場では半年から1年かかります
- 店が少ないと供給網の強みが消える。蜜雪の安さは「たくさんの店にまとめて原料を送る」ことで成り立っています。日本のように店が数店しかないと、原料は小口の輸入になり、輸送費、関税、為替が重なって、現地ブランドより原価が高くなることもあると钛媒体は指摘しています。池袋店の原料は中国からの輸入で、箱に「出口日本」と書かれていたと36氪出海の取材記事にあります
- 輸入の手続きに時間がかかる。表参道の予告から開店まで8か月かかった主因は、原料と設備の検疫と認証だったと会社が界面新聞に説明しています
- 日本はすでに安いお茶があふれている市場。缶やペットボトルのお茶、コンビニ、自動販売機が生活の動線を全部おさえていて、「安いお茶」で驚く余地が小さい。加えて日本人は甘さ控えめで茶の味が濃い飲み物を好む傾向があり、低価格と高い甘さで勝負する型が繰り返し買う動機になりにくいと钛媒体は書いています
- 先進国では「安く見せない」コストがかかる。界面新聞は、表参道やシドニーの中心部に広く明るい店を出したことについて、商業施設の入居条件や建物の保護規制に合わせるには店の格を上げるしかなく、それが初期の出店速度を落としたと分析しています
要するに、蜜雪氷城の強みは「店が多いこと」そのものです。店が少ない市場では、強みが出る前にコストで負けます。若水数位評価はこれを「サプライチェーンの移植の壁」と呼び、東南アジアで再現できた仕組みを先進国で再現できるかが今後の試金石だと書いています。日本は、その試金石で今のところ最も苦戦している国の一つです。
飲食店が真似できること、できないこと
ここからは当社の見方です。飲食店の食材を扱う会社として、蜜雪氷城の仕組みのうち、どこが日本の飲食店やカフェに持ち込めるかを分けて考えました。
真似できること
- 「客寄せの1品」を原価ぎりぎりで置く。蜜雪の1元のソフトクリームと4元のレモン水は、それ自体で儲ける商品ではなく、店に入る理由を作る商品です。日本の店でも、原価率を気にせず「この店といえばこれ」と言われる1品を持つ考え方は同じです。大事なのは、その1品が通年で出ることです。蜜雪は冬にソフトクリームが売れずに加盟店が減った経験から、通年商品のレモン水とミルクティーに向かいました
- 常温で持てる原料でメニューを組む。36Kr Japanが目論見書から伝えているように、蜜雪の原料は粉末や濃縮液など常温保存できるものが中心で、冷蔵物流を使わないことが物流費と店のオペレーションを軽くしています。個人店でも、冷凍庫を圧迫しない常温の濃縮原料やシロップを軸にすると、仕込みと在庫が楽になります
- メニューの数を絞り、看板を1つの記号に寄せる。雪王のように店の顔を1つに決めると、写真を撮られ、覚えられます。キャラクターを作れなくても、色とロゴと看板商品を揃えるだけで効果の方向は同じです
真似できないこと
- 原料を自分で作る。5つの工場と31の倉庫は、数万店の需要があって初めて成り立ちます。個人店やチェーンの初期でこれを目指すのは現実的ではなく、代わりに「まとめて仕入れて安くする卸」を使うのが同じ効果を得る近道です
- 店の数で原価を下げる。蜜雪の安さは店の数の関数です。店が少ない段階で価格だけ真似すると、利益が出ないまま終わります。日本で蜜雪自身が苦戦している理由がまさにこれです
- 加盟店に損益を任せる仕組み。本部が売上の分け前を取らず原料で稼ぐ型は、日本のフランチャイズ法制や商習慣ではそのまま持ち込みにくく、加盟店側の採算が悪化したときの摩擦も大きくなります。閉店2,527店と食品安全の苦情は、この型の裏側です
看板メニューは何でできているか。業務用で再現するなら
最後に、蜜雪氷城の看板メニューを素材の目で分解します。目論見書によると、2024年1〜9月に売れた数はレモン水が11億杯、ソフトクリームが14億個、タピオカミルクティーが3億8,500万杯です(若水数位評価の整理)。どれも特別な材料は使っていません。
| 看板メニュー | 主な素材 | 店で必要な設備 |
|---|---|---|
| 冰鮮檸檬水(レモン水) | 生レモン、シロップ、氷、水 | 製氷機、シェイカー |
| ソフトクリーム | ソフトクリームミックス、コーン | ソフトクリームマシン |
| 珍珠奶茶(タピオカミルクティー) | 紅茶、ミルク、黒糖タピオカ、シロップ | 茶の抽出器、タピオカを煮る鍋 |
| 棒打鮮橙・果茶(フルーツティー) | お茶、果実、フルーツソース、シロップ | 製氷機、シェイカー |
日本の飲食店やカフェが同じ方向のメニューを組むなら、業務用の黒糖タピオカ、シロップ、冷凍フルーツソースがあれば、この表の3つ目と4つ目はそのまま作れます。蜜雪と違って店の数で原価を下げられない分、仕入れをまとめて安くする側に回るのが現実的です。
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よくある質問
蜜雪氷城の読み方は?
蜜雪氷城はなぜ安いのですか?
蜜雪氷城は上場していますか?
蜜雪氷城の店舗数は?
日本にはどこに店舗がありますか?
日本でフランチャイズに加盟できますか?
蜜雪氷城の日本のメニューと値段は?
参考にした資料(26本。別タブで開きます)
- 蜜雪集団(MIXUE Group)2026年中間報告(香港取引所への開示、2026年8月)
- 蜜雪集団 公式サイト(2025年業績公告などの投資家情報)
- JETROビジネス短信「中国のドリンクチェーンなどを展開する蜜雪集団、2025年の当期純利益は前年比33%増」(2026年4月)
- 36Kr Japan「中国ティードリンク「MIXUE」、25年売上高35.2%増の約7700億円 世界6万店に拡大」(2026年3月)
- 36Kr Japan「中国MIXUE、店舗2割増でも売上は横ばい 6万4000店で見えた成長の壁」(2026年9月、Yahoo!ニュース配信)
- 36Kr Japan「中国発ティードリンク「MIXUE」、日本で出店攻勢 目標は28年までに1000店舗」(2023年11月)
- 36Kr Japan「中国激安ティーブランド、日本進出。高級エリア表参道出店に中国人ツッコミ」(2022年12月)
- 36Kr Japan「中国発激安ティードリンク「蜜雪氷城」が上場へ。恐るべき収益力の秘密」(2022年9月)
- Business Insider Japan「スタバ抜いて世界首位。「ソフトクリーム40円」の激安チェーン、デフレでも強い堅実経営」(2025年4月)
- ダイヤモンド・チェーンストア「飲料スタンドチェーン・蜜雪氷城の「StoBtoC型」FCモデルの全貌とは」(2023年9月)
- JBpress「“激安”ミルクティー店の中国最大手MIXUEが日本進出、背景にある切実な事情」(2023年5月)
- SNOW KING株式会社プレスリリース「飲食フランチャイズ世界店舗数No.1ブランド「MIXUE」が横浜エリアに初進出!」(2025年9月、PR TIMES)
- 日本経済新聞「中国飲料チェーン最大手の蜜雪、生ビール参入 60億円で専門店買収」(2025年10月)
- 日経中文網「蜜雪冰城在日本展開攻勢 能否獲得當地消費者的心?」(2025年12月、経済日報転載)
- 界面新聞「蜜雪冰城在日本降价,未来5年还要开千店」(2023年10月)
- 36氪出海「蜜雪冰城在日本涨价,探访东京门店:柠檬茶和甜筒最受欢迎」(2024年7月)
- 钛媒体・金角財経「千店目标只完成0.4%,蜜雪冰城在日本踢到铁板了」(2026年7月)
- 長江商報「蜜雪冰城市值缩水超千亿港元 2527家加盟店退场遭消费投诉超1.1万起」(2026年3月、新浪財経配信)
- 小食代「蜜雪冰城335亿成绩单出炉后,业绩会今天谈到管理层调整、门店提质增效还有幸运咖升级」(2026年3月)
- 南方日報「蜜雪冰城“赚钱”背后的硬核供应链」(2025年3月)
- 澎湃新聞・財経天下「卖便宜奶茶,蜜雪冰城一年赚了45亿」(2025年3月)
- 観察者網「全球门店破5.3万家,蜜雪集团上半年净利润大增44.1%」(2025年8月)
- RULES CREATIVE「一間偽裝成茶飲品牌的供應鏈公司:蜜雪冰城發展史」(2024年4月、Medium)
- 若水数位評価「蜜雪冰城:手搖飲界的「隱形供應鏈帝國」如何用低價顛覆全球茶飲市場生態?」(2025年3月)
- 食力foodNEXT「蜜雪冰城市值破百億美元!1元冰淇淋小攤販如何變全球飲品霸主?」(2025年7月)
- Wikipedia「蜜雪氷城」(日本語版・中国語版)
数字は各資料の公表時点のものです。店舗数や価格は変わりやすいため、本文では時点を併記しています。