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ブランド研究

喜茶(HEYTEA、ヘイティー)とは何者か。チーズティーを生んだ店が規模の競争から降りた理由と、日本の店のその後

チーズティーを最初に広めたとされる中国のティーチェーンは、この2年で店を1,000店減らし、日本の1号店も動きを止めました。負けたのか、それとも降りたのか。公開資料と現地の報道から、喜茶の勝ち方と降り方、日本での15か月を整理しました。飲食店が持ち帰れることも分けて書いています。

公開日 2026年9月21日

喜茶(HEYTEA、ヘイティー)は、2012年に中国・広東省江門市で生まれたティードリンクのチェーンで、クリームチーズの泡を載せた「チーズティー」を最初に広めたとされる店です。高い価格と行列で知られた直営の時代、2022年の値下げとフランチャイズ解禁、4,600店を超えた規模の時代を経て、2025年2月に「数字のゲームと規模の消耗戦には参加しない」と宣言して加盟の募集を止め、2026年9月7日に約19か月ぶりに選抜型で再開しました。

日本では2025年2月に大阪・道頓堀に1号店が開きましたが、2026年5月にデリバリーの営業を終え、この記事の公開時点で商業施設の公式テナント一覧から名前が消えています。閉店や撤退の公式な発表はありません。この記事では、規模を競う同業と反対の道を選んだこの会社の仕組みを、時系列で読み解きます。金額は1元を約23円で換算しています。

中国・東莞市の商業施設にあるHEYTEA(喜茶)の店舗外観。白い壁面に立体のHEYTEA・喜茶の看板文字が2段に並び、店頭に客が集まっている
中国・東莞市の商業施設に入る喜茶の店舗。白を基調にした店構えと、英語と漢字を並べた看板は、蜜雪氷城の赤やCHAGEEの木目と対照的です(撮影: 茅野ふたば、2024年11月、Wikimedia Commons、CC BY 4.0)

喜茶とは。数字で見る現在地

まず、この会社の大きさと現在地を、公開されている数字で並べます。

項目数字・事実時点
創業2012年5月、広東省江門市。創業者は聶雲宸(ニエ・ユンチェン)氏(1991年生まれ)。創業時の店名は「皇茶(ロイヤルティー)」
本部広東省深圳市。2016年に「喜茶(HEYTEA)」へ改名
店舗数(中国)約3,545店。ピークは2024年10月ごろの4,600店超で、そこから1,000店以上減2026年7月
店舗数(海外)28都市で100店超。イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、韓国、シンガポール、マレーシアなど2025年8月
評価額約600億元(約1兆4,000億円)。2021年7月の5億ドル調達時。投資家は紅杉、高瓴、騰訊(テンセント)、淡馬錫(テマセク)など2021年7月
上場していない。同業が相次いで上場するなかで非上場のまま2026年9月
主な価格帯(中国)15〜25元(約345〜575円)。2022年2月の値下げ前は20〜30元台
看板商品チーズティー(芝士茶)、多肉葡萄(ぶどうの果肉のフルーツティー)、超級植物茶(ケールなどの野菜と茶)
フランチャイズ2022年11月に解禁、2025年2月10日に募集停止、2026年9月7日に約19か月ぶりに再開
日本2025年2月15日に大阪・道頓堀で1号店開店。2026年5月20日にデリバリー営業を終了し、9月時点で施設のテナント一覧に掲載なし2026年9月

この表で目を引くのは、店舗数が「減っている」ことです。同業の蜜雪氷城は6万店超、CHAGEEは7,639店と、どちらも増やし続けています。喜茶だけが1,000店以上減らし、上場もしていません。ただ、これは単純な失速ではなく、会社が自分で選んだ結果でもあります。順を追って見ていきます。

チーズティーはこの店から広まった。皇茶からHEYTEAへ

喜茶の歴史は、1991年生まれの聶雲宸氏が、携帯電話の販売店をたたんで2012年5月に広東省江門市の路地に開いた小さな店から始まります。店名は「皇茶」でした。ここで売り出したのが、クリームチーズと生クリームを泡立てて塩をきかせ、淹れたてのお茶に載せる「芝士奶蓋茶」、いまで言うチーズティーです。香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは、聶氏を「チーズトップティーを流行させた人物」として紹介しています。

ひとつ丁寧に書いておくと、泡立てたミルクフォームを載せるお茶自体は、それより前から台湾にありました。喜茶が広めたのは「クリームチーズを使う」いまの型です。第三者がどちらが先かを検証した資料は見当たらないため、この記事では「最初に作ったとされる」に留めます。日本でチーズティーが「台湾生まれ」と紹介されることが多いのは、この二段階の歴史が混ざっているためです。

「皇茶」の名前は商標登録ができず、真似をした店が乱立しました。そこで2016年に商標を確保できる「喜茶」へ改名します。模倣に名前を奪われた経験が、後の「ブランドを守る」姿勢の原点になっています。

年できごと
2012年5月広東省江門市で「皇茶」創業。チーズティーの原型「芝士奶蓋茶」を売り出す
2016年商標問題で「喜茶(HEYTEA)」へ改名。IDG資本などから1億元を調達し、広東省の外へ
2017〜2018年上海、北京など大都市へ。開店のたびに長い行列ができ、「行列のできる茶」として全国区に。2018年にシンガポールと香港へ進出
2021年7月5億ドルを調達し、評価額約600億元。当時の店舗数は1,000店に満たず、1店あたりの評価額は突出していた
2022年2月に全面値下げ、11月にフランチャイズ解禁。この年は60店超を閉め、800店台で足踏み
2023〜2024年加盟店で急拡大。2023年末に3,200店超、2024年10月ごろに4,600店超
2025年2月「数字のゲームと規模の消耗戦には参加しない」と宣言し、加盟募集を停止
2026年9月約19か月ぶりに加盟募集を再開。ただし選抜型

高い1杯に並ばせた直営の型

2022年まで、喜茶は10年間フランチャイズを一切やらず、全店直営を貫きました。1杯20〜30元台という、業界では高い値段でも、開店のたびに長い行列ができました。並ばせた力は3つあります。

2018年、中国・重慶の商業施設にあるHEYTEA店舗前で、仕切りのポールに沿って数十人が列を作っている
2018年、重慶の商業施設の喜茶。仕切りのポールに沿って列が折り返しています。この「行列ごとブランド」の時代の喜茶は全店直営でした(撮影: Junyi Lou、2018年12月、Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0)

この型はお金がかかります。一等地の大型店、多めの店員、その日の果物の仕込み。だから喜茶は外部の資本を入れ続けました。2021年7月には5億ドルを調達し、評価額は約600億元。報道によるとテンセント、セコイア、テマセクといった投資家が並び、まだ1,000店に満たない直営チェーンとしては破格の値付けでした。この評価額が、後の「規模を追う」圧力にもなります。

2022年、2つの禁を破る。値下げとフランチャイズ解禁

2022年、喜茶はそれまで自分に課していた2つの禁を、立て続けに破ります。

1つ目は値下げです。2022年2月、全商品を1〜10元下げ、「30元台の商品はなくす」「年内は値上げしない」「29元以上の新商品は出さない」と宣言しました。値下げ後は15〜25元が全商品の6割超になり、9元の純茶も置きました。高価格帯の客層だけでは伸びが止まり、同業の奈雪の茶も同時期に値下げしています。プレミアム路線の限界を、業界の先頭で認めた形です。

2つ目はフランチャイズの解禁です。2022年11月、10年続けた直営専業をやめ、「事業合夥人(事業パートナー)」の名前で加盟の募集を始めました。対象は一線都市以外で、必要資金は50万元(約1,150万円)以内と報じられています。翌2023年3月には海外の加盟窓口も開き、日本、シンガポール、アメリカなどからも申請できるようになりました。

2つの決断の背景には同じ計算があります。中国のティードリンク市場の主戦場が、高価格帯の一線都市から、15元前後の地方都市へ移っていたことです。蜜雪氷城が2万店を超え、CHAGEEが伯牙絶弦で駆け上がっていた時期で、直営のままでは規模の競争に加われませんでした。

4,600店まで増えて、何が起きたか

解禁の効果は劇的でした。2023年の1年間で2,392店が新しく開き、2023年末には3,200店を超えます。加盟希望が殺到し、2024年10月ごろには4,600店を超えました。2年で店の数はおよそ5倍です。

ただ、増えた先で起きたことも、はっきり数字に出ています。

店舗数の推移(中国・店) 約8002022年 3,200超2023年末 4,600超2024年10月 3,9772025年10月末 3,5452026年7月 出所: 36氪、21世紀経済報道(統計サイト窄門餐眼のデータ)ほか各報道
2年で5倍に増やしたあと、2年で1,000店以上減りました。2022年は全店直営、2023年以降の増加分はほぼ加盟店です。ピークの店舗数は報道によって4,477店から4,600店超まで幅があります。

2025年「数字のゲームには参加しない」宣言

2025年2月10日、喜茶は社内向けの書簡を出します。題名は「数字のゲームと規模の消耗戦には参加しない。ユーザーとブランドに回帰する」。そこには、資本のための価格競争や盲目的な店舗拡大が業界を同質化の競争に陥らせている、という趣旨の言葉が並び、あわせて加盟申請の受付を止めました。当時、喜茶の店の7割以上は加盟店でした。

言葉だけなら宣言で終わりますが、喜茶は実際に店を減らしました。新華網は2025年12月に、喜茶の店舗がこの1年で600店以上消え、加盟店が収益の悪化に直面していると伝えています。21世紀経済報道によると、募集を止めていた約2年間の新規出店は累計でわずか110店です。増やすのをやめただけでなく、採算の合わない店が閉まるのを止めなかった、ということです。

読み方の注意: 「1,000店減」は、本部の危機と同時に、加盟店の撤退の集積でもあります。閉めた1店1店には、開業資金を投じた加盟店のオーナーがいます。募集停止は「これ以上、勝てない場所に人を招かない」という判断でもあり、後で書く再開時の「勧退」の文言につながります。

この選択が同業と正反対である点は強調しておきます。同じ2025年、蜜雪氷城は香港市場に上場して店を増やし続け、CHAGEEはNASDAQに上場しました。評価額600億元まで資本を入れた会社が、上場のレースからも規模のレースからも降りる。中国のメディアがこの宣言を大きく扱ったのは、それが業界の常識の逆だったからです。

2026年9月、19か月ぶりの加盟再開。「儲かる業界ではない」と言って募る

そして2026年9月7日、喜茶の注文用アプリ「喜茶GO」のなかに、「事業合夥人になりたい」という申請の入口が静かに戻りました。2025年2月の停止から約19か月ぶりです。複数の中国メディアが確認して報じ、この記事の公開時点で最も新しい喜茶のニュースになっています。

ただし、募集の姿勢は停止前と別物です。案内には、およそ次の趣旨の文言が添えられています。「新茶飲は高い利益の出る業界ではない。短期の高い回収だけを求め、素早く入って素早く出ることを望むなら、申請はお勧めしない」。加盟ビジネスの募集文句としては異例の、来る人を選んで断る書き方で、中国メディアはこれを「勧退(思いとどまらせる)式の募集」と呼びました。申請には資金の確認に加えて、店をどう経営するか、どんなチームでやるかを書いた事業計画書の提出が求められます。

規模で蜜雪氷城とCHAGEEに勝てない以上、「選んだ加盟店と、ブランドの格で勝つ」しか道がない。この再開の形は、2025年の宣言と矛盾しない範囲で拡大の余地を残す、現実的な落とし所と読めます。

2026年7月、中国・杭州の商業施設に開いたheytea lab 2.0の店舗。小文字のheytea・喜茶の看板の下のカウンターに向かって、仕切りのポールに沿った行列ができている
2026年7月、杭州の商業施設に開いた新型店「heytea lab」。小文字の新しいロゴを掲げたカウンターに、仕切りのポールに沿って列ができています。店を減らした後も、新しい店の形の実験は続いています(撮影: Benteds、2026年7月、Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0)

海外はプレミアム路線のまま。ロンドン、ニューヨーク、パリ

中国で値下げと縮小を選んだ喜茶ですが、海外では逆に、創業期のプレミアム路線をそのまま持ち出しています。

時期展開
2018年シンガポールと香港へ。海外1号店
2023年3月海外の加盟窓口を開放。日本、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどから申請可能に
2023年8月ロンドンに出店。アジアの外では初
2023年10〜12月オーストラリア、カナダ、マレーシア、そしてニューヨークへ
2024年3月韓国・ソウルの狎鴎亭に1号店。7月に弘大、10月には明洞に旗艦店
2024年7月パリ五輪の直前にパリへ。中国のティーチェーンとしてフランス初と報じられる
2025年2月大阪・道頓堀に日本1号店(次の章で詳しく)
2025年8月アメリカのクパチーノに出店し、米国30店超。海外全体で28都市100店超に

ロンドン、ニューヨーク、パリ、ソウル。並べると分かるとおり、地方都市に広げた中国国内と違い、海外は各国の一等地に絞っています。海外の店では現地の物価に合わせた高めの価格がつき、「中国の新式茶飲の代表」という顔で出ています。中国国内の競争から逃れた先で、創業期の型がいちばん通用するのが海外市場だった、という言い方もできます。シンガポールの調査会社モメンタム・ワークスは、国内での値下げと海外でのプレミアム路線の間で、このモデルが持続できるかに疑問を投げかけていますが、答えはまだ出ていません。

日本の現在地。幻の渋谷と、道頓堀の15か月

「HEYTEA 日本 撤退」という検索が増えています。先に結論を書くと、撤退や閉店の公式な発表は、この記事の公開時点で見つかりません。ただし大阪・道頓堀の日本1号店は2026年5月20日にデリバリーの営業を終え、9月時点で商業施設の公式テナント一覧から名前が消えています。確認できた事実を時系列で並べます。

時期できごと出所
2019年6月HEYTEA JAPAN株式会社が東京で設立される。法人番号9011101087974。現在の登記上の所在地は港区六本木国税庁の法人番号公表サイト
2020年1月渋谷センター街に3月オープン予定と報じられる。日本語の公式SNSも開設されたファッションメディアの報道
2020〜2021年渋谷の店は開店しないまま。日本語の公式SNSは2021年末ごろに更新が止まり、用意されていた店の看板が消えたという目撃投稿が残る当時のSNS投稿、中国系メディア
2025年2月15日大阪・道頓堀の商業施設DOTON PLAZAの1階に日本1号店が開店。面積は約147平方メートル。開店から3日間は1日平均600人が来店し、1,500杯を販売施設運営会社のプレスリリース
2025年2〜5月価格は1杯550〜1,250円、平均1,000円前後と報じられる。開店直後は行列と品切れの投稿が続く36Kr Japan、当時のSNS投稿
2026年5月20日Uber Eatsでの営業を終了。店舗ページにその旨の表示が残るUber Eatsの店舗ページ
2026年6月飲食店のレビューサイトに残る最後の訪問記録。以降、同サイトは「休業か閉店か確認できない」として掲載を保留食べログ
2026年9月DOTON PLAZAの公式フロアガイドにHEYTEAの掲載がない。閉店の告知も見当たらない。日本法人の登記は閉鎖されていないDOTON PLAZA公式サイト、法人番号公表サイト
日本での歩み 2019年6月日本法人設立 2020年3月渋谷の1号店は開店せず 2025年2月15日道頓堀に開店3日間で1日平均600人が来店 2026年5月20日デリバリー営業を終了 2026年9月テナント一覧に掲載なし 出所: 法人番号公表サイト、施設運営会社のプレスリリース、Uber Eats、DOTON PLAZA公式サイト
2020年の東京は開店に至らず、2025年の大阪は開店から約15か月で動きが止まりました。撤退の公式発表はありません。

道頓堀の店がどう受け止められていたかは、レビューサイトの32件の記録からある程度読めます。味への評価は悪くない一方で、「1杯1,000円を超えるのは高い」という声と、「客の多くが中国や韓国からの観光客だった」という観察が繰り返し出てきます。場所も道頓堀という、日本で最もインバウンドの密度が高い一角でした。

なぜ日本で根づかなかったのか。当社の見方

ここからは当社の見方です。蜜雪氷城の記事で、私たちは「日本では蜜雪の武器である安さが、100円ショップ級の物価差がないため効かない」と書きました。喜茶はその逆で、ブランドがまだ知られていない市場に、1杯1,000円のプレミアム価格から入ったことが重かったと見ています。中国で1杯20元の喜茶を知っている観光客には割高でも納得の値段ですが、初めて見る日本の客には、比較の基準が「近所のティースタンドの500〜700円」しかありません。ロンドンやニューヨークで同じ価格戦略が続いているのは、アジア系住民の厚みと「中国で有名な店」という文脈が先に届いているからで、日本ではその文脈が観光客の中にしかなかった。安すぎて効かない蜜雪と、高すぎて浮いた喜茶は、同じ「本国の型を持ち込む難しさ」の裏表です。

蜜雪氷城、CHAGEE、喜茶。3つの勝ち方を比べる

蜜雪氷城、CHAGEE、喜茶。3社を並べると、同じ「中国のティーチェーン」がまったく別の勝ち方をしていることが分かります。

蜜雪氷城(MIXUE)CHAGEE(霸王茶姫)喜茶(HEYTEA)
価格帯(中国)6〜8元(約140〜180円)15〜22元(約350〜510円)15〜25元(約345〜575円)
店舗数6万店超(世界最多)7,639店(2026年6月末)約3,545店(2026年7月)+海外100店超
本部の稼ぎ方加盟店への原料・包材の卸原料の卸と設備の販売非公開(未上場のため)。直営売上と加盟店への供給
勝ち筋圧倒的な安さ。アイス2元・レモン水4元の「安さの記号」伯牙絶弦1品への集中と、注文から受け取りまでのデジタル化チーズティー、多肉葡萄など「新カテゴリを作り続ける」ブランドの力
上場香港(2025年3月)NASDAQ(2025年4月)していない
規模への態度増やし続ける出店を抑えて直営化を進める募集を止めて1,000店減、選抜型で再開
日本出店済み。安さが効かず伸び悩む法人設立とSNS開設のみ。未出店2025年に出店、約15か月で動きが止まる

3社を分けるのは勝ち筋です。蜜雪は、原料を自分の工場で作って加盟店に安く卸し、圧倒的な安さで店の数を積み上げます。CHAGEEは、商品を伯牙絶弦の1品に絞り、注文から受け取りまでをデジタル化して、誰が作っても同じ味を速く出します。1品への集中はそれ自体が目的というより、原料と工程を減らしてこのオペレーションを成立させるための選択です。喜茶は、チーズティーのように新しいカテゴリを作り続け、ブランドの格で高い1杯を売ります。規模の競争は「安さ」と「オペレーション」の勝ち筋に有利で、「ブランド」の勝ち筋が同じ土俵に乗ると、規模で負けてブランドも薄まる。喜茶のこの数年の紆余曲折は、その理屈をそのまま数字にしたものだと私たちは読んでいます。「安さ」「オペレーション」「カテゴリ創造」という3つの勝ち筋は、日本の飲食店がメニューと売り方を考えるときの教材にそのまま使えます。

飲食店が真似できること、できないこと

飲食店の食材を扱う会社として、喜茶の6年間から日本の飲食店やカフェが持ち帰れるものを分けます。ここも当社の見方です。

真似できること

真似できないこと

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喜茶のメニューは何でできているか。業務用で再現するなら

最後に、喜茶を代表するメニューを素材の目で分解します。どれも「茶葉のお茶」が土台で、そこに乳と果物を重ねる構成です。

メニュー主な素材店で必要なもの
芝士茶(チーズティー)緑茶・烏龍茶・紅茶のいずれか、クリームチーズ、生クリーム、牛乳、塩お茶を濃く淹れる道具、泡立て器かブレンダー
多肉葡萄(ぶどうのフルーツティー)皮をむいたぶどうの果肉、緑茶、氷。チーズフォームを載せる場合も果肉を潰すペストル、シェイカー
超級植物茶(野菜と茶)ケールなどの野菜、果物、茶ブレンダー
純茶(ストレートティー)茶葉、水、氷お茶を淹れる道具、製氷機

ポイントは、土台のお茶の濃さです。チーズフォームや果肉のような強い素材を載せるので、お茶が薄いとただの甘い飲み物になります。ジャスミン茶、四季春(台湾の軽い烏龍茶)、蜜香紅茶のような香りの立つ茶葉を濃いめに淹れるか、抽出済みの濃縮茶を使うと、上に何を載せても茶の輪郭が残ります。チーズフォーム自体は、クリームチーズ、生クリーム、牛乳、ひとつまみの塩を七分立てにするのが基本形で、業務用の乳製品がそのまま使えます。

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よくある質問

喜茶(HEYTEA)の読み方は?
日本では英語名から「ヘイティー」と読まれることが多いです。中国語の「喜茶」の発音は「シーチャー」に近い音です。2012年の創業時は「皇茶(ロイヤルティー)」という名前でしたが、商標の問題から2016年に「喜茶(HEYTEA)」へ改名しました。
HEYTEAはどこの国のブランドですか?
中国のブランドです。1991年生まれの聶雲宸氏が2012年に広東省江門市で創業し、現在の本部は深圳にあります。2026年7月時点の中国の店舗数は約3,545店で、ほかにイギリス、アメリカ、韓国、マレーシアなど海外の28都市に100店以上あります。
HEYTEAの日本の店はもう無いのですか?
2025年2月15日に大阪・道頓堀の商業施設DOTON PLAZAに日本1号店が開きましたが、2026年5月20日にデリバリーでの営業を終え、2026年9月時点で施設の公式テナント一覧に掲載されていません。閉店や日本撤退についての会社からの公式な発表は、この記事の公開時点で確認できていません。
チーズティーはHEYTEAが発明したのですか?
クリームチーズを泡立てて載せる現在の型のチーズティーは、喜茶が2012年に前身の皇茶で出した「芝士奶蓋茶」が最初に広めたとされています。ただし、塩味のミルクフォームを載せたお茶はそれより前から台湾にあり、どこからを発明と呼ぶかには幅があります。日本では「台湾生まれ」と紹介されることも多いのはこのためです。
喜茶の店舗数は?
中国の飲食チェーンの統計サイトのデータで、2026年7月時点で約3,545店です。2024年10月ごろの4,600店超がピークで、そこから1,000店以上減りました。ほかに海外が28都市で100店以上あります。同業の蜜雪氷城は6万店超、CHAGEEは7,639店なので、規模では3番手以下です。
喜茶は上場していますか?
上場していません。2021年の資金調達のときの評価額は約600億元(約1兆4,000億円)と報じられました。蜜雪氷城やCHAGEEなど同業が2024年から2025年にかけて相次いで上場するなかで、喜茶は2026年9月時点でも非上場のままです。
喜茶のフランチャイズに加盟できますか?
2026年9月7日に、約19か月ぶりに加盟(事業合夥人)の申請受付が再開されました。ただし募集の案内に「新茶飲は高い利益の出る業界ではない」と書き、経営計画書の提出を求める選抜型です。日本を含む海外からの加盟窓口は2023年に開かれた実績がありますが、現在の日本向けの条件は公表されていません。
参考にした資料(32本。別タブで開きます)

数字は各資料の公表時点のものです。店舗数や価格は変わりやすいため、本文では時点を併記しています。喜茶は未上場のため、店舗数や収入の内訳には会社の開示がなく、報道と統計サイトの数字に幅があります。

執筆者 神戸慧士の顔写真
執筆: 神戸 慧士(マルイ物産 データ分析)
数字はすべて公開資料からの引用で、当社の見方は「当社の見方」と明記した部分に限っています。喜茶は未上場のため決算の開示がなく、店舗数などは報道と統計サイトの数字を時点付きで使っています。写真はいずれもWikimedia Commonsのクリエイティブ・コモンズ写真(実物の店舗)です。
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